経営者や管理職の仕事では、経営判断や現場への対応に加えて、取引先への返信、会議の準備、従業員への連絡などが日々発生します。複数の仕事を抱えていると、必要な情報を探し、対応する順番を決めるだけでも時間がかかります。
例えば、会議の前に過去のメールや議事録を探して保留事項を確認したり、会議のあとに決定事項を担当者へ伝えたりする作業があります。こうした情報整理や文案作成の一部を支援する方法が、AI秘書の活用です。
AI秘書には専用サービスを使う方法、ChatGPTなどで簡易的に試す方法、自社の業務に合わせて構築する方法があります。まずAI秘書の役割と通常のAIチャットとの違いを整理し、1日の活用例をもとに、どの仕事を任せ、どの導入方法を選ぶかを考えます。対応できる範囲は製品や接続設定によって異なるため、任せたい仕事から確認していきます。
AI秘書とは?AIチャットとの違い
AI秘書とは、生成AIなどを使って、情報整理や予定管理、事務作業を支援する仕組みです。AIチャットで議事録を要約することも秘書業務の支援ですが、AI秘書として継続的に利用する場合は、日々の仕事に必要な情報を扱えるようにする点が特徴です。
できることは、情報の整理、対応の提案、業務の実行の3段階に分けて考えられます。例えば、受信したメールを要約し、返信が必要なものを挙げ、利用者が承認した返信案を下書きに保存する、といった流れです。
実行できる操作はサービスや権限設定によって異なります。また、予定を指定時刻に通知するだけなら、AIを使わない通常の自動化で十分です。文章の内容を読み取り、複数の情報を整理したり対応を提案したりするところに、AIを使う価値があります。
AI秘書が支援できる5つの仕事
AI秘書は、特別な仕事だけでなく、毎日の小さな事務作業にも活用できます。
| 業務 | 具体的な活用例 |
|---|---|
| メール管理 | 重要メールの抽出、要約、返信案の作成 |
| 予定管理 | スケジュールの確認、日程候補の整理、会議準備 |
| タスク管理 | 依頼事項の抽出、優先順位の整理、期限の確認 |
| 会議支援 | 議事録の要約、決定事項や対応事項の整理 |
| 資料・情報検索 | 過去のメールや社内資料から必要な情報を探す |
例えば、取引先から届いたメールに複数の依頼が含まれていれば、AIで依頼事項、期限、確認が必要な点に分けられます。議事録から、誰が何をいつまでに対応するのかを抽出することもできます。
ただし、AIが読み取った期限や担当者が正しいとは限りません。重要な項目は元のメールや議事録に戻って確認できるようにしておきます。
AI秘書を使うと1日の仕事はどう変わる?
営業活動と会社の管理業務を兼務する経営者を例に、仕事の流れを考えてみます。
朝:予定と優先タスクを確認する
仕事を始めるとき、今日の会議予定、返信が必要なメール、期限が近い仕事をまとめて確認します。例えば、午前の営業会議、午後の取引先訪問、明日が期限の提案書などを一覧にし、先に対応すべき仕事を整理します。
会議前:必要な情報を準備する
取引先との過去のメールや前回の議事録を参照し、回答を保留していた事項や今回確認すべき点をまとめます。関連資料を探す時間を減らし、打ち合わせの内容に集中しやすくなります。
会議後:決定事項を次の仕事につなげる
会議の記録から決定事項と対応事項を抽出し、担当者や期限を整理します。必要に応じて、お礼メールや社内共有文の下書きも作ります。

ここまでを一つのサービスですべて処理できるとは限りません。利用するツールや接続設定によって、情報を取得できる範囲と実行できる操作が変わります。
AI秘書を導入する3つの方法
導入方法には、専用サービスを利用する方法、ChatGPTやClaudeを簡易的なAI秘書として使う方法、自社の業務システムと連携して構築する方法があります。
① AI秘書業務に使えるサービスを利用する
AI秘書の専用ツールや、秘書業務にも使える法人向けAIサービスを利用する方法です。メールや日程調整を中心にした製品と、社内情報の検索や文案作成まで扱う製品があります。任せたい仕事と、現在使っているメールや社内ツールに合わせて選びます。
| サービス・提供元 | 秘書業務での主な用途 | 導入時に確認すること |
|---|---|---|
| レスミー 株式会社ship | 受信メールの分類・返信下書き、日程調整リンクの作成、カレンダーへの予定登録 | 利用中のメール・カレンダーとの連携と対応プラン。下書きは利用者が確認して送信します。 |
| LINE WORKS AiStudio LINE WORKS株式会社 | トーク・掲示板などの情報検索や要約。LINE WORKSとの連携では、メールの内容から予定・タスクを提案 | LINE WORKS内の情報を使う場合は、LINE WORKSとの併用と利用機能に対応する契約・設定を確認します。 |
| 生成AIアシスタント 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト | メール・議事録の作成、要約、SharePoint・Teams・Outlookなどの情報検索 | 「AIプラス 生成AIソリューション」の実行環境として提供。費用や導入構成、参照する社内情報と連携設定を確認します。 |
専用サービスは導入の負担を抑えやすい一方、製品ごとに対応業務が違います。利用中のメール・カレンダーとの連携、必要なプラン、料金、データの取り扱いを確認します。メールや予定へのアクセス権限と、AIに任せる操作の範囲も確認します。
② ChatGPTやClaudeで簡易的なAI秘書を作る
専用サービスを契約する前に試すなら、普段利用している生成AIを使う方法があります。ChatGPTやClaudeのプロジェクト機能で、担当業務、回答形式、タスクの優先順位の考え方などを設定します。
まずは予定や仕事の一覧を手入力で渡し、「今日の予定・優先タスク・確認事項」の順に整理してもらうだけでも試せます。この方法にプラグインは不要です。ChatGPTでGmailやGoogle Driveなどのプラグイン連携も使う場合は、本稿ではPlus以上の対応プランを前提にします。各プラグインの詳細と利用中のアカウントで、対応プランや権限を確認してください。
手入力で試す方法は小さく始めやすい反面、情報を渡す手間が残ります。連携へ進むときは、ChatGPTなどの利用料金も費用に含めて比較します。連携機能や定期実行の可否・対象範囲は、サービス、プラン、権限設定などによって異なります。OpenAI公式のプラグイン利用案内
③ 業務システムと連携したAI秘書を構築する
毎朝の情報収集や社内システムへの登録まで自動化したい場合は、業務に合わせた仕組みを構築する方法があります。
例えばGoogle Workspaceを使う企業なら、Google Apps Script(GAS)でカレンダーの予定や所定のタスク一覧を取得し、生成AIで要点をまとめて本人に通知する構成が考えられます。必要に応じてGmailの下書き保存や、スプレッドシートへのタスク登録にも拡張できます。
GAS以外にも、Power Automateやn8nなどの自動化ツールを使う方法があります。独自の仕事に合わせられる一方、接続設定、エラー対応、権限管理、運用後の保守が必要です。
自社にはどのAI秘書が向いている?
3つの方法は機能の優劣ではなく、任せたい仕事と運用できる範囲で選びます。

| 比較項目 | 専用サービス | 簡易AI秘書 | 自社向け構築 |
|---|---|---|---|
| 主な手段 | レスミー・LINE WORKS AiStudio・生成AIアシスタントなど | ChatGPT・Claudeなど | GAS・n8n・API連携など |
| 始めやすさ | 比較的高い | 高い | 設計・設定が必要 |
| 業務への適合 | 製品の対応範囲内 | 指示と連携機能で調整 | 自社業務に合わせて設計 |
| 自動実行 | 製品機能による | 機能・プランによる | 必要な処理を設計できる |
| 主な費用 | サービス利用料、必要に応じた初期設定費 | AIサービス利用料、設定と結果確認の時間 | 初期の設計・構築費、API等の利用料、保守費 |
メールの確認や返信に時間を取られているなら、専用サービスが候補です。自分の予定やタスクを整理するところから始めたいなら、ChatGPTやClaudeで試す方法が考えられます。社内の案件管理表など独自の情報を参照する必要があれば、自社向けの構築を検討します。
既存サービスで必要な仕事を処理できるなら、そのまま使い続ける選択肢もあります。追加の連携や構築は、残る手作業と運用費用を比べて判断します。
AI秘書を使う際に確認しておきたいこと
参照する情報と操作権限を決める
メールや社内資料をAIにつなぐ場合、どの情報を参照できるのか、どの操作まで認めるのかを確認します。機密情報を扱う場合は、利用するサービスのデータ利用条件やアクセス権限も対象です。
提案と実行を区別する
メールの要約や返信案の作成は定常的に利用し、社外への送信は担当者が確認する、といった分け方が考えられます。すべての通知や情報整理に逐一承認を求めるのではなく、業務単位で許可する範囲を決めることが実用的です。
重要な事実は原文で確かめる
AIが作成した要約でも、日付、金額、担当者、契約条件などは取り違える可能性があります。判断に関わる部分は元のメールや資料と照合できるようにします。
まずは一つの仕事から試してみる
最初から多くの仕事を任せるのではなく、毎朝の予定確認や未対応タスクの整理など、一つの仕事に絞って試してみます。
- 現在はどこから情報を集め、どれくらい時間を使っているか
- AIが必要な情報を正しく整理できているか
- 情報を入力する手間や、回答を確認する時間は大きくないか
- 継続的に使うなら、どの部分を連携・自動化したいか
手作業で予定を渡すだけで十分便利なら、それ以上の仕組みは必要ないかもしれません。一方、毎回の転記が負担なら、カレンダーやタスク管理ツールとの連携を検討する段階です。導入前後の作業時間や確認漏れを比べることで、追加投資の必要性も判断しやすくなります。
まとめ|必要な仕事に合ったAI秘書を選ぶ
AI秘書は、メール、予定、会議、タスクなどの情報を整理し、日々の仕事を支援します。既存の専用サービスを使う方法、ChatGPTやClaudeで簡易的に始める方法、自社向けに構築する方法があり、向いている仕事はそれぞれ異なります。
まずは負担になっている仕事を一つ選び、今使っているツールで改善できるかを確かめてみてください。複数のシステム連携が必要になった段階で、独自の仕組みを検討する方法もあります。
業務改善の進め方については、中小企業のスモールDX入門も参考になります。
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