新事業進出・ものづくり補助金 第1回|3つの枠と補助額・変更点を解説

2026年8月31日から、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回の申請受付が始まります。公募要領(第1回・1.0版)は2026年6月29日に公開されました。
この補助金は、これまで別々に運用されてきた新事業進出補助金とものづくり補助金を統合した新しい制度です。革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つの枠が設けられ、補助上限額は最大9,000万円とされています。
本記事では、中小企業診断士の視点から、第1回公募の概要、3つの枠と補助上限、統合で変わった点、申請までの流れ、審査の観点、事業計画書づくりのポイントまでをまとめました。数字・要件は公募要領で必ず最新版をご確認ください。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業等が行う、技術的革新性のある製品・サービスの開発、既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化を後押しする制度です。生産性向上を通じて賃上げにつなげることを目的としています。
従来の新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進補助金)とものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業)を統合し、令和8年度から新設されました。事務局は独立行政法人中小企業基盤整備機構です。取り組みたい内容に応じて、3つの枠から選んで申請します。
第1回公募の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公募要領公開日 | 2026年6月29日(月) |
| 申請受付開始 | 2026年8月31日(月) |
| 応募締切 | 2026年9月30日(水) 18:00 |
| 採択発表(予定) | 2026年12月頃 |
| 補助率 | 1/2〜2/3(枠・特例により変動) |
| 申請方法 | 電子申請システム(GビズIDプライム必須) |
3つの補助対象事業枠
第1回公募では、取り組む内容に応じて以下の3つの枠が用意されています。どの枠で申請するかによって、対象となる取組・補助上限額・補助事業実施期間が異なります。
| 枠 | 対象となる取組 | 実施期間(交付決定日から) |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | 10か月以内 |
| 新事業進出枠 | 既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 14か月以内 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化 | 14か月以内 |
革新的新製品・サービス枠は、単に機械装置やシステムを導入するだけでは対象になりません。新製品・新サービスの開発を伴うことが求められます。新事業進出枠は、自社にとって新規性のある製品等を、自社にとって新たな市場へ提供することが要件です。グローバル枠は、取引先主導ではなく自発的な海外販路開拓であることが条件とされています。
補助金額の範囲
補助上限額は、枠と従業員規模に応じて設定されています。賃上げ特例の要件を満たすと、上限額がさらに引き上げられます(下表の括弧内)。
革新的新製品・サービス枠(補助下限額100万円)
| 従業員規模 | 通常上限 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 1〜5人 | 750万円 | 850万円 |
| 6〜20人 | 1,000万円 | 1,250万円 |
| 21〜50人 | 1,500万円 | 2,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 | 3,500万円 |
補助率は、中小企業者が1/2、小規模企業者・小規模事業者および再生事業者が2/3です。地域別最低賃金引上げ特例の適用を受ける場合は、中小企業者も2/3に引き上げられます。
新事業進出枠・グローバル枠(補助下限額750万円)
| 従業員規模 | 通常上限 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 1〜20人 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
補助率は、新事業進出枠が中小企業者1/2(地域別最低賃金引上げ特例で2/3)、グローバル枠は一律2/3です。
※ 賃上げ特例の適用には、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を追加+2.5%(合計+6.0%)、事業場内最低賃金を追加+20円(合計+50円)以上とする上乗せ目標が必要です。上限額に達しない場合や再生事業者は適用できません。正確な要件は公募要領で確認してください。
統合で変わった主なポイント
1. 2制度が統合され、3つの枠に再編
新事業進出補助金とものづくり補助金が1つの制度に統合され、革新的新製品・サービス枠・新事業進出枠・グローバル枠の3枠に整理されました。輸出に取り組む企業向けのグローバル枠が新設された点も特徴です。
2. 基本要件が6つに(子育て・両立支援の要件を追加)
3〜5年の事業計画で満たすべき基本要件は、以下の6つとされています。付加価値額・賃上げ・最低賃金の3要件に加えて、次世代法に基づく一般事業主行動計画の公表と子育て等に関する職場環境整備の取組が要件として加わりました。6つ目の金融機関要件は、金融機関等から資金提供を受ける場合にのみ適用される条件付きの要件です。
| 基本要件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 付加価値額 | 年平均成長率+4.0%以上 |
| 2. 賃上げ | 一人当たり給与支給総額 年平均+3.5%以上(未達は返還) |
| 3. 事業場内最低賃金 | 地域別最低賃金より+30円以上を毎年維持(未達は返還) |
| 4. ワークライフバランス | 一般事業主行動計画を策定・公表 |
| 5. 子育て等の職場環境整備 | 3つの選択肢から1つを選んで取り組む(くるみん等認定で免除) |
| 6. 金融機関要件(条件付き) | 金融機関等から資金提供を受ける場合、資金提供元による事業計画の確認書を提出(自己資金のみなら不要) |
3. 他の補助金との重複申請に制限
申請締切日を起点に16か月以内に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・本補助金で交付候補者として採択された事業者、または締切時点でこれらの交付決定を受けて事業実施中の事業者は、補助対象外とされています。複数の補助金へ同時に応募すること自体は可能ですが、採択された場合は交付を受ける補助金を1つ選ぶ必要があります。
申請までの流れ
申請から採択、事業実施までの主なステップは以下のとおりです。GビズIDプライムの取得と一般事業主行動計画の公表は、いずれも準備に時間がかかるため、早めの着手をお勧めします。
| STEP | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 01 | GビズIDプライムアカウント取得 | 1週間程度 |
| 02 | 一般事業主行動計画の策定・公表(両立支援のひろば) | 1〜2週間 |
| 03 | 事業計画書の作成・添付資料(決算書・労働者名簿等)の整備 | 3〜4週間 |
| 04 | 金融機関等から資金調達する場合は事前相談・確認書取得 | 2週間 |
| 05 | 電子申請システムから応募(締切2026年9月30日) | 締切日まで |
| 06 | 書面審査・(必要に応じて)口頭審査 | 締切後 |
| 07 | 採択発表(2026年12月頃)→交付申請(採択後2か月以内) | 1〜2か月 |
| 08 | 交付決定後に事業実施(枠により10〜14か月以内) | 事業期間内 |
| 09 | 実績報告 → 補助金確定 → 入金 | 2〜3か月 |
| 10 | 事業化状況報告(5年間・計6回) | 採択後数年 |
※ 各手続きの詳細や様式は、事務局が公開する応募申請ガイド・電子申請システム操作マニュアル(後日公開予定)をご確認ください。
審査の観点
審査は書面審査を基本とし、一定の基準を満たした事業者には必要に応じて口頭審査が行われます。書面審査は概ね以下の観点に沿って行われるとされています。事業計画書を書く際の参考にしつつ、必ず最新の公募要領で内容を確認してください。
書面審査の主な観点
| 審査の観点 | 主な評価ポイント |
|---|---|
| 1. 補助対象事業としての適格性 | 補助対象事業の要件を満たすか、経費が真に必要かつ合理的な額か |
| 2. 経営戦略との整合性 | 過去の取組との一貫性、強み・弱みを踏まえた競争優位性、課題認識の適切さ |
| 3. 事業の実現可能性 | 目標値の実現可能性、遂行体制、選ばれる理由、スケジュール、財務・資金調達 |
| 4. 新市場性・高付加価値性(新事業進出枠に限る) | 新市場性または高付加価値性のいずれかを満たすか(選択制) |
| 5. 公的補助の必要性 | 経済波及効果・費用対効果・イノベーション貢献、自社単独では困難か |
| 6. 政策面 | 経済社会の変化(関税影響等)への対応、地域経済への波及、産業クラスターとの整合 |
| 7. 大規模な賃上げ計画の妥当性 | 賃上げ特例を適用する場合、その計画・算出根拠が妥当か |
加点項目
以下に該当する事業者は、書面審査で加点される取扱いとされています。加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります。取得に数か月かかる認定もあるため、狙う場合は早めの準備が必要です。
- パートナーシップ構築宣言
- くるみん認定(子育てサポート)
- えるぼし認定(女性活躍推進)
- 健康経営優良法人2026
- 再生事業者
- 経営革新計画の承認
- 事業継続力強化計画・連携事業継続力強化計画
- DX認定
- J-Startup・J-Startup地域版
- 新規輸出1万者支援プログラム(グローバル枠のみ)
- 日本の食輸出1万者支援プログラム(グローバル枠のみ)
- 研究開発費・試験研究費の計上
- 地域別最低賃金引上げに係る加点
- 事業場内最低賃金引上げに係る加点(2025年7月比で63円以上の賃上げ)
減点項目
- 賃上げ加点を受けて採択されたのに要件を達成できなかった事業者(未達報告から18か月間は大幅減点)
- 過剰投資の抑制(類似テーマへの申請集中時に別途審査・減点)
- 過去の補助事業の事業化が進展していない事業者(事業化段階3段階以下)
- 過去3年間にものづくり補助金または新事業進出補助金で交付決定を1回受けている事業者
- ものづくり補助金・新事業進出補助金で基本要件(賃上げ・事業場内最賃)を達成できなかった事業者
※ 口頭審査はオンライン(Zoom等)で1事業者15分程度、申請事業者本人が対応する必要があります(支援者・コンサルタントの同席は不可)。各項目の詳細は公募要領および応募申請ガイドで確認してください。
採択される事業計画書とは、結局のところこれらの審査の観点に一つずつ正面から答えた計画書です。実務で特に差がつきやすいのは、(1)選んだ枠の要件(革新性/新市場性・高付加価値性/自発的な海外販路)を具体的に示すこと、(2)付加価値額や賃上げの数値を算出根拠とともに実現可能な水準で置くこと、(3)機械装置・システム構築費や建物費を中核に据え、一過性の支出に偏らない費目設計にすること、の3点です。いずれも上表の審査項目に直結します。
新市場性と高付加価値性を理解する(新事業進出枠)
新事業進出枠では、審査の観点4として新市場性または高付加価値性のいずれかを満たすことが事業計画書に求められます。それぞれの違いを正しく理解しておくと、自社がどちらで勝負するかが見えやすくなります。
新市場性とは
公募要領では、新市場性は概ね以下のように整理されています(正確な定義は最新の公募要領および新市場・高付加価値事業の考え方をご確認ください)。
補助事業で取り組む事業により製造等する製品等のジャンル・分野の、社会における一般的な普及度や認知度が低いものであるか。
ポイントは自社にとっての新規性ではなく、社会全体での未成熟さを問われる点です。ジャンル・分野の普及度や認知度が低いことを、業界統計・市場調査などの客観的データで示す必要があります。内閣官房と中小企業庁が提供する地域経済分析システム(RESAS)なども、業界動向や地域データの確認に活用できます。
高付加価値性とは
もう一方の高付加価値性は、概ね以下のように整理されています。
同一のジャンル・分野の中で、当該製品等が、高水準の高付加価値化・高価格化を図るものであるか。
こちらは同じジャンルの相場と比較して、高品質・高単価を実現するかを問われます。未開拓のジャンルへ飛び込む必要はなく、既存事業の知見を活かして勝負できるのが特徴です。計画書では、同ジャンルの相場価格を調査・分析したうえで、高付加価値化の源泉となる価値・強みを妥当な形で説明することが求められます。
どちらで攻めるか
両者は階層が異なる概念です。新市場性は社会にとっての新しさ、高付加価値性は同分野内での価値の高さを問います。実務では、既存事業の延長線にある資源・技術を活かしやすい高付加価値性の方が、計画書として組み立てやすい傾向があります。迷う場合は、まず高付加価値性から検討し、新市場性も成立しそうなら両方を備える設計にするのが一つの目安です。
中小企業が陥りがちな4つの落とし穴
落とし穴1: GビズID・行動計画の準備遅れ
GビズIDプライムは発行まで1週間程度、一般事業主行動計画の公表は両立支援のひろばへの掲載に1〜2週間かかります。いずれも締切直前では間に合わない可能性があります。申請を検討する段階で、この2つは先に着手しておくのが安全です。
落とし穴2: 事業計画書の準備期間不足
事業計画書には、選んだ枠の要件・市場性・実現可能性・投資効果・賃上げ計画など、書き込むべき要素が多くあります。質の高い計画書には最低3〜4週間の作成期間が必要です。直近3期分の決算書や労働者名簿など、添付書類の準備にも時間を見込んでおきましょう。
落とし穴3: 賃上げ要件の未達リスク
事業計画期間中に、一人当たり給与支給総額+3.5%や事業場内最低賃金+30円などが未達だった場合、達成率に応じた補助金の返還義務が生じます(付加価値額が未増・赤字等の場合の免除要件はあります)。賃上げ特例(合計+6.0%、最低賃金+50円)を狙う場合は、特に慎重な計画設計が必要です。
落とし穴4: 採択後の事務負担
採択後は交付候補者向け説明会への参加、交付申請(採択発表から2か月以内)、実績報告、事業化状況報告(5年間・計6回)が続きます。システム構築費が100万円以上の場合は要件定義書の提出も必要です。本業と並行して対応するための体制づくりを、申請段階から計画に織り込んでおくと良いでしょう。
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回のポイントを再掲します。
SUMMARY
2026/8/31受付開始、9/30締切
採択発表は2026年12月頃の予定
3つの枠・補助額100万〜9,000万円
革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠、従業員規模と特例で上限が変動
新事業進出補助金とものづくり補助金が統合
基本要件は6つに(行動計画の公表・子育て環境整備を追加)
新市場性・高付加価値性は新事業進出枠で問われる
いずれかを選択、既存事業との違いを客観データで示す
返還義務・口頭審査・重複申請制限に注意
無理な賃上げ目標は減点・返還につながる
第1回の応募締切は2026年9月30日です。GビズID未取得の方や一般事業主行動計画が未公表の方は、今から手続きを始め、事業計画書の作成と並行して進めることをお勧めします。どの枠で申請するか、費目をどう設計するかで採択のしやすさは変わります。制度の読み解きや計画づくりでお困りの際は、オプティードの補助金活用支援で無料相談(30〜60分)を承っています。お気軽にお問い合わせください。
