新事業進出補助金 第4回の使い方|申請の流れと第3回からの変更点

2026年5月19日から、新事業進出補助金 第4回の応募申請が開始されます。

第4回では「地域別最低賃金引上げ特例」による補助率2/3の引き上げ、賃上げ要件の指標の一本化、賃上げ加点の明確化など、第3回からいくつかの重要な変更が加えられました。

本記事では、中小企業診断士の視点から、第4回公募の概要、従業員規模ごとの補助上限、第3回からの変更点、申請までの流れ、採択されやすい計画書のポイントをまとめました。

目次

新事業進出補助金とは

新事業進出補助金は、既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出に意欲を有する中小企業等を対象とする制度です。2025年度に創設されました。

単なる規模拡大ではなく、新市場・新分野への進出が支援対象です。既存事業の延長で売上を伸ばすケースは対象外となるため、事業計画書では既存事業との違いを明確に示す必要があります。

第4回公募の概要

項目 内容
公募要領公開日2026年3月27日(金)
申請受付開始2026年5月19日(火)
応募締切2026年6月19日(金) 18:00
採択発表(予定)2026年9月頃
補助率(原則)1/2
補助率(特例適用時)2/3(地域別最低賃金引上げ特例)

補助金額の範囲

第4回公募では申請枠による区分はなく、補助金額は従業員規模に応じて一律に設定されています。全規模共通で下限額は750万円であり、750万円未満の事業は補助対象外となります(交付審査等で減額された結果750万円を下回った場合も採択取消の対象です)。賃上げ特例の要件を満たすと、上限額がさらに引き上げられます。

従業員規模 下限額 通常上限 賃上げ特例適用時
20人以下750万円2,500万円最大3,000万円
21〜50人750万円4,000万円最大5,000万円
51〜100人750万円5,500万円最大7,000万円
101人以上750万円7,000万円最大9,000万円

※ 賃上げ特例の適用には、年平均成長率+2.5%(合計+6.0%)・事業場内最低賃金+20円(合計+50円)以上の上乗せ目標が必要です。正確な金額・要件は公募要領で確認してください。

第3回からの主な変更点

1. 地域別最低賃金引上げ特例(補助率2/3)

第3回までは補助率が原則1/2でしたが、第4回では「地域別最低賃金引上げ特例」が創設され、該当する事業者は補助率が2/3に引き上げられます。

適用要件は、2024年10月から2025年9月までの間に、地域別最低賃金以上〜2025年度改定後の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上いる月が3カ月以上あることです。地域別最低賃金の引上げ対応に苦慮する企業を支援する狙いです。

2. 賃上げ要件の指標が一本化

第3回までは「都道府県別最低賃金の成長率以上」または「給与支給総額の年平均成長率2.5%以上」のいずれかを満たせばよい設計でしたが、第4回からは「一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上」に一本化されました。総額ベースで考える余地がなくなり、一人当たりの処遇改善がより明確に求められる設計に変わっています。

3. 賃上げ特例要件の基準変更

補助上限額が引き上げられる賃上げ特例のベース指標も変更されました。第4回では、賃上げ要件の3.5%に加え、さらに+2.5%(合計+6.0%)の一人当たり給与支給総額の年平均成長率と、事業場内最低賃金の+50円以上の上乗せが必要です。総額ベースから一人当たりベースへの変更で、より厳格な賃上げが求められる設計になっています。

4. 賃上げ加点の明確化

賃上げに関する加点項目が明確化されました。公募要領10章「審査項目」(8)加点項目の第11号「事業場内最低賃金引上げに係る加点」によれば、2025年7月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、全国目安で示された額(63円以上)の賃上げをしている事業者が加点対象です。

申請までの流れ

申請から採択までの主なステップは以下のとおりです。

STEP 内容 目安期間
01GビズIDプライムアカウント取得1週間程度
02事業計画書の作成・添付資料の整備3〜4週間
03金融機関等から資金調達する場合は事前相談・確認書取得2週間
04電子申請システム(Jグランツ)から応募締切日まで
05審査3ヶ月程度
06採択発表(2026年9月頃)→交付申請1〜2ヶ月
07交付決定後に事業実施事業期間内
08実績報告 → 補助金確定 → 入金2〜3ヶ月
09事業化状況報告(数年間)採択後数年

※ 事業期間や事業化状況報告の年数は公募要領をご確認ください。

審査の観点

書面審査は、公募要領10章「審査項目」に記載された次の9項目に沿って行われます。事業計画書を書く際は、各項目に対する自社の説明が網羅されているかをチェックしてください。

書面審査の9項目

審査項目 主な評価ポイント
(1)補助対象事業としての適格性申請が補助金の対象要件を満たしているかの基本確認。付加価値額・賃上げの目標値が高い水準で実現可能か
(2)新規事業の新市場性・高付加価値性新市場性(社会における普及度・認知度が低い分野か)または高付加価値性(同分野で高水準の付加価値化・高価格化か)のいずれかを満たすか
(3)新規事業の有望度継続的な売上・利益を確保できる市場規模か。競合分析と差別化の優位性が明確か
(4)事業の実現可能性遂行方法・スケジュール・課題解決方法が明確か。財務状況・体制・経費の妥当性
(5)公的補助の必要性補助金がなければ事業実現が困難か。費用対効果、地域・サプライチェーンへの波及効果
(6)政策面経済社会変化(関税の影響等)への対応、先端技術活用、地域経済への波及
(7)大規模な賃上げ計画の妥当性
※賃上げ特例の適用希望者のみ
大規模な賃上げの取組内容・算出根拠が妥当か。一時的でなく継続的な利益増加を人件費に充当できるか
(8)加点項目11種類の加点項目(後述)
(9)減点項目4種類の減点項目(後述)

加点項目(11種類)

以下に該当する事業者は、書面審査で加点されます。応募締切日時点で要件を満たしている必要があります。取得期間にはバラつきがあり、パートナーシップ構築宣言は約10日、成長加速マッチングサービス登録は最短1日程度で対応可能な一方、くるみん認定・えるぼし認定・技術情報管理認証制度などは数ヶ月かかる場合があります。

  • パートナーシップ構築宣言
  • くるみん認定(子育てサポート企業)
  • えるぼし認定(女性活躍推進)
  • アトツギ甲子園
  • 健康経営優良法人2025
  • 技術情報管理認証制度
  • 成長加速化マッチングサービス
  • 再生事業者
  • 特定事業者(中小企業基本法上の特定の要件該当者)
  • 地域別最低賃金引上げに係る加点
  • 事業場内最低賃金引上げに係る加点

減点項目

  • 過去に加点要件を達成できなかった事業者(未達報告から18か月間は大幅減点)
  • 過剰投資の抑制(類似テーマへの集中投資時に減点)
  • 過去の補助事業の事業化が進展していない事業者
  • 新事業指針評価が低い例に該当する事業者

※ 各項目の詳細は、第4回応募申請ガイドおよび公募要領で確認してください。

新市場性と高付加価値性を理解する

審査項目(2)新規事業の新市場性・高付加価値性は本制度の核心となる観点です。公募要領では「①と②は選択制」と明記されており、「新市場性」または「高付加価値性」のいずれかを満たすことが事業計画書に求められます。それぞれの違いを正しく理解しておくと、自社がどちらで勝負するかが見えやすくなります。

新市場性とは

新市場性は公募要領10章「審査項目」(2)①で次のように定義されています。

補助事業で取り組む新規事業により製造又は提供する製品・商品若しくはサービスのジャンル・分野の、社会における一般的な普及度や認知度が低いものであるか。

ポイントは「自社にとっての新規性ではなく、社会全体での未成熟さ」を問われる点です。ジャンル・分野の普及度や認知度の低さを、業界統計・市場調査などで客観的に示す必要があります。

ジャンル・分野の区分の仕方

ジャンル・分野を区分する際は、製品等の「性能」「サイズ」「素材」「価格帯」「地域性」「業態」「顧客層」「効果」等の要素を排除する必要があります。中小企業基盤整備機構「新市場・高付加価値事業の考え方」では、適切な区分と不適切な区分の例が次のように示されています。

新規事業の内容 適切な区分 不適切な区分
純ニッケルを使用した水素発生装置の部材加工水素発生装置の部材純ニッケルを使用した水素発生装置の部材(素材を含めるのは不適切)
介護施設向けの栄養価の高い大豆食品の製造大豆食品介護施設向けの栄養価の高い大豆食品(顧客層・性能を含めるのは不適切)
東京都港区で高級焼肉店を経営焼肉店東京都港区の高級焼肉店(価格帯・地域性を含めるのは不適切)
外国人労働者向け就職プラットフォーム就職プラットフォーム外国人労働者向け就職プラットフォーム(顧客層を含めるのは不適切)
フードロス問題に資する長期保存可能なチョコレートチョコレートフードロス問題に資する長期保存可能なチョコレート(効果・性能を含めるのは不適切)

出典: 中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構「新市場・高付加価値事業の考え方」(令和7年4月)。

区分したジャンル・分野の社会における普及度や認知度が低いことを、客観的なデータ・統計で裏付ける必要があります。「何屋さんですか」と問われたときに、性能・地域・顧客層を含まない一般名称で答えたうえで、そのジャンル自体が社会で未成熟であることを示せるかが目安です。

高付加価値性とは

高付加価値性は公募要領10章「審査項目」(2)②で次のように定義されています。

同一のジャンル・分野の中で、当該新製品等が、高水準の高付加価値化・高価格化を図るものであるか。

こちらは「同じジャンルの相場と比較して、高水準の高付加価値化・高価格化を実現するか」を問われます。新市場性のように未開拓のジャンルへ飛び込む必要はなく、既存事業の知見を活かして勝負できるのが特徴です。

高付加価値性を計画書で示すための3つの軸:

  1. 業界相場の調査・分析: 同ジャンルの一般的な付加価値や相場価格を公的統計・市場調査で明示し、自社想定価格との差を示す
  2. 高付加価値化の源泉: 材料の希少性、技術的独自性、顧客体験の深さ、ブランディング、既存事業の知見活用など、なぜ高単価が成立するのかを論理的に説明
  3. 客観的な裏付け: 比較表・相場表、公的レポートや第三者評価で根拠を補強

中小企業基盤整備機構「新市場・高付加価値事業の考え方」では、高付加価値化・高価格化のイメージとして次のような例が示されています。

新規事業の内容 高付加価値化の源泉
建設事業者が既存事業での木材知見を活かして、オーダーメイドの無垢材木製家具の製造に取り組むオーダーメイドや無垢材という特長に加え、既存事業の知見を活用
畳製造事業者が畳の複合施設(畳製品に触れ合えるカフェ・オープンファクトリーでの畳づくり体験)を開業既存事業の製品・技術を活かしたカフェ営業とものづくり体験の提供
操作盤の内作により蒸留所を開設し、グレーン専用ウイスキーの開発販売に取り組む操作盤の内作により日本では珍しいクラフトグレーンウイスキーの開発製造
地域の観光資源と連携した体験型観光ホテルの経営地域の観光資源との連携や体験の提供による差別化

出典: 中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構「新市場・高付加価値事業の考え方」(令和7年4月)。掲載事例は分かりやすさを優先したもので、同じ計画を策定しても審査により不採択となる可能性はあります。

高付加価値性が認められにくい例:

  • 単に「高級品です」とだけ主張し、相場との比較根拠がない
  • 既存製品との差別化要因が説明できていない
  • 品質向上の理由がなく、価格だけ上げている

どちらで攻めるか

両者は階層が異なる概念です。新市場性は社会にとっての新しさ、高付加価値性は同分野内での価値の高さを問います。実務では、既存事業の延長線にある資源・技術を活かしやすい高付加価値性の方が、計画書として組み立てやすい傾向があります。新市場性は需要や先行事例が見えにくく、ハードルが高くなりがちです。

自社の状況に応じて、以下のように使い分けるのが一つの目安です。

  • 新分野・新ジャンルでの先行者利益を狙える → 新市場性で攻める
  • 既存事業の知見・技術を活かした差別化が得意 → 高付加価値性で攻める
  • 迷う場合 → まずは高付加価値性から検討する

採択されやすい事業計画書の3つの観点

9項目ある書面審査のうち、計画書の出来で差が付きやすく、事業計画書全体の軸になりやすいのが次の3つの観点です。書く順番ではなく、書き始める前に方針として固めておく観点として整理しました。

1. 新市場性または高付加価値性を客観データで論証する

対応する審査項目: (2)新規事業の新市場性・高付加価値性 / (3)新規事業の有望度

本制度の核心は新市場・高付加価値事業への進出です。自社にとっての新規性に加え、社会における普及度・認知度の低さ(新市場性)または同分野の相場・付加価値水準と比較した高付加価値化(高付加価値性)のいずれかを、業界統計・市場調査・公的データで客観的に示す必要があります。ジャンル区分は性能・素材・地域・顧客層を排除した一般名称で行うこともポイントです。

2. 付加価値額・賃上げの数値計画を実現可能な水準で設計する

対応する審査項目: (1)適格性 / (4)事業の実現可能性 / (7)大規模な賃上げ計画の妥当性

付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率と、一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上(賃上げ特例なら6.0%以上)が要件です。基準値を上回る高い目標は加点されますが、未達の場合は補助金返還義務が生じ、減点ルールにより次回以降の申請にも影響します。高すぎず低すぎない、根拠ある数値を売上計画・人員計画と整合させて示すことが重要です。

3. 実施体制・資金調達・スケジュールで実現可能性を裏付ける

対応する審査項目: (4)事業の実現可能性 / (5)公的補助の必要性

計画の魅力だけでなく「本当に実行できるか」が審査されます。人員体制(必要なスキル・人員配置)、資金調達(金融機関等から資金提供を受ける場合は金融機関による事業計画の確認書が必要。自己資金のみなら提出不要)、スケジュール(中長期の課題と解決方法)を、過度に第三者依存にせず、財務状況とともに示してください。融資前提なら、取引金融機関との事前相談を早めに進めることが計画の質も高めます。

中小企業が陥りがちな4つの落とし穴

落とし穴1: GビズID取得の遅延

GビズIDプライムは郵送による本人確認が必要で、発行まで1週間程度かかります(申請混雑時はさらに長引く可能性があります)。第4回は5月19日受付開始、6月19日締切のため、未取得の場合は今すぐ手続きを始めることをお勧めします。

落とし穴2: 事業計画書の準備期間不足

新事業進出の事業計画書は、既存事業との違い・市場性・実現可能性・投資効果・賃上げ計画など、書き込むべき要素が多くあります。クオリティの高い計画書には最低3〜4週間の作成期間が必要です。

落とし穴3: 賃上げ要件未達成リスク

本補助金では、事業計画期間終了時に「1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上」「事業場内最低賃金の引き上げ」などが未達だった場合、達成率に応じた補助金の返還義務が生じます(付加価値額が未増・赤字等の場合の免除要件はあります)。賃上げ特例(年平均+6.0%以上、最低賃金+50円以上)を取りに行く場合は、特に慎重な計画設計が必要です。

落とし穴4: 採択後の事務負担

採択後は交付申請(契約先1件あたり50万円(税抜)以上は3者以上の相見積もりが必要)、実績報告(膨大なエビデンス整備)、事業化状況報告(数年間)が続きます。本業と並行して対応するための体制づくりを、申請段階から計画に織り込んでおくと良いでしょう。

まとめ

新事業進出補助金 第4回のポイントを再掲します。

SUMMARY

01

2026/5/19受付開始、6/19締切

採択発表は2026年9月頃の予定

02

補助金額 750万〜7,000万円

下限750万円・従業員規模で上限変動、賃上げ特例で最大9,000万円

03

地域別最低賃金引上げ特例で補助率2/3

第3回からの主な変更点(賃上げ要件の一人当たり指標への一本化も)

04

事業計画書の3観点

新市場性・高付加価値性の客観データ/実現可能な数値計画/体制・資金・スケジュールの裏付け

05

賃上げ未達リスクと事務負担に注意

無理な目標は減点ルール・返還義務につながる

第4回の応募締切は2026年6月19日です。GビズID未取得の方は今すぐ手続きを開始し、事業計画書の作成と並行して進めることをお勧めします。

統合後制度との関係

2026年8月以降、新事業進出補助金とものづくり補助金は「新事業進出・ものづくり補助金」として統合される予定です。公募要領の公開は2026年6月、申請受付は8月開始の予定とされています。

統合後の補助上限は、革新的新製品・サービス枠が750万〜2,500万円(賃上げ特例時 最大3,500万円)、新事業進出・グローバル枠が2,500万〜7,000万円(賃上げ特例時 最大9,000万円)とされており、第4回と概ね同じ規模感です。

ただし、統合に伴う細かな要件変更や審査基準の調整が見込まれるため、現行制度で申請の準備が整っている場合は、第4回での申請を検討する価値があります。

※ 統合スケジュールおよび統合後制度の枠名称・補助上限額は、中小企業庁・中小企業基盤整備機構の発表(2026年3月時点)に基づく情報です。第4回公募要領そのものには含まれていません。最新情報は中小企業庁および中小企業基盤整備機構の公式発表をご確認ください。

参考資料

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